そばアレルギーの方は、お入りいただけません/十割は水・金・土のみ/持ち帰り・お取り寄せなし/日曜・第三月曜 定休

木のカウンターに置かれた漆の盆。天丼と、温かいつゆに入った小丼のそばと、赤い椀の味噌汁が載っている。よその店の卓で、うちの器でも品書きでもない。

Yushima, Bunkyō · SOBA KIBACHI

木鉢蕎麦屋(手打ち)きばち/木鉢三年、延し三月、包丁三日何割が蕎麦か、全部に書いてあります。

文京区湯島の蕎麦屋です。明治三十四年から同じ場所で、いまは五代目が打っています。品書きの蕎麦ぜんぶに、そば粉が何割かを書きました。外食に表示の義務はありません ── 店で「そば」と言って出すのに、そば粉の下限は法律のどこにもありません。ただ、この数字は思われているほど多くを決めません。二八と更科は同じ八割で別のものですし、十割はいちばん上ではありません。そして零割のうどんは、そばアレルギーの方には安全ではありません。数字と、その数字で決まらないことを、同じ大きさで並べてあります。

  • そば粉の割合を全品に表示
  • 十割は打てた日だけ
  • 打ちたてを茹でて出す
  • そばアレルギーの方はお入りいただけません

03-3832-0416/11:00 – 15:00・17:00 – 19:30/日曜・第三月曜 定休

Photo: bady abbas / Unsplash

  • よその店の卓を借りた写真です。うちの卓でも、うちの器でも、うちの品書きでもありません。
  • 味噌汁が付いています。蕎麦屋に味噌汁は出しません ── うちがお出しするのはそば湯です(四の節)。
  • そばが温かいつゆに入って、小さな丼で出ています。うちの一枚めは冷たいせいろで、つゆは別の猪口です。
  • そして、この写真からはそば粉が何割か分かりません。色でも太さでも分かりません。このページが数字で言おうとしていることを、この一枚は一つも言えません。
  • 天丼はうちにもありますが、これはうちのものではありません。組み合わせも量も値段も、よその店のものです。

The scale this shop works on

100
91
90
80
0

零から十割まで。うちの蕎麦は右の端に六本しかありません。 三割の点線は、袋に入って売られる「そば」の下限で、外食のうちにはかかっていません

The ratio

割 ── そば粉が何割か

うちの蕎麦は、そば粉が何割かを全部に書いてあります。外食に表示の義務はありません ── 店で「そば」と言って出すのに、そば粉の下限は法律のどこにもありません。ただ、書いたうえで申し上げます。この数字は、思われているほど多くを決めません。押すと、その蕎麦が尺のどこに立っているかと、その数字で決まらないことが出ます。押したものはどこにも送られません。

The ratio, nought to ten

100
91
90
80
0

零 ── うどんそれでも、そばアレルギーの方は召し上がれません。同じ釜、同じ湯で茹でるからです。割尺の零は、安全の零ではありません(六の節)。

三割 ── 点線。袋に入って売られている「そば」は、そば粉が三割に満たなければ、そう名乗れません(生めん類の表示に関する公正競争規約、乾めん類品質表示基準)。ただしこれは包装された商品の決まりで、店で調理して出すものには及びません。

八割から十割 ── 六本。うちの蕎麦はここに固まっていて、八割には三本が重なっています。 零から八割までが空いているのは、品揃えの都合ではありません。

Which one

どの蕎麦のことですか

二八せいろにはち

千円

そば粉
80%
二八
二番粉
にばんこ
つなぎ
小麦粉
小麦粉 二割
茹で
60秒
注文をいただいてから釜に入れます

そば粉八に小麦粉二。この店の芯で、五代のあいだ品書きの真ん中にあります。一枚めにお勧めするのはこれです。

下の更科と同じ八割です。同じ数字で、色も香りも喉ごしもまったく別のものになります。分けているのは割合ではなく、どこの粉かです(三の節)。数字は順位ではありません。

Stacked at the same mark

更科せいろが、同じ80% に立っています。粉が違います二番粉一番粉)── 押し替えて見比べてください。同じ数字で、別のものです。

かけそばも同じ80% で、こちらは粉も同じです。違うのは出し方だけ ── 同じ点に 立っていても、理由は一つではありません。

Hot broth

温かいつゆに入れられます。

Days we can make it

毎日。

The left-hand end of the rule

零割 ── うどん八百円

そば粉は一粒も入っていません。小麦粉と水と塩だけです。割尺のいちばん左に立っています。

それでも、そばアレルギーの方は召し上がれません。同じ釜、同じ湯で茹でるからです。割尺の零は、安全の零ではありません(六の節)。

The menu

品書き

値段は漢数字で刷っています。算用数字が出るのは、二つ以上を並べて比べるところ ── そば粉の割合と、茹での秒数だけです。せいろはどれも一枚の量が同じで、大盛りはありません。

蕎麦の品書きと、そば粉の割合
そば粉茹で値段打てる日
十割せいろ十割/つなぎなし100%挽きぐるみ40千五百円水・金・土のみ。粉と湿度で決まるので、打てない日は朝に品書きから消して、札を出します。
外一せいろ外一/小麦粉(そば粉十に対して外に一)91%二番粉50千三百円毎日。
二八せいろ二八/小麦粉 二割80%二番粉60千円毎日。
更科せいろ二八(一番粉)/小麦粉 二割80%一番粉55千二百円毎日。数が少ないので、夕方には終わっていることがあります。
田舎せいろ九割/小麦粉 一割90%挽きぐるみ70千二百円毎日。
かけそば二八/小麦粉 二割80%二番粉60九百円毎日。
うどん零割/小麦粉0%600秒八百円それでも、そばアレルギーの方は召し上がれません。同じ釜、同じ湯で茹でるからです。割尺の零は、安全の零ではありません(六の節)。

A line that does not reach us

この線は、この店にはかかっていません

袋に入って売られている「そば」は、そば粉が三割に満たなければ、そう名乗れません(生めん類の表示に関する公正競争規約、乾めん類品質表示基準)。ただしこれは包装された商品の決まりで、店で調理して出すものには及びません。

つまり外食には下限がありません。二割の麺を「そば」と言って出しても、法律は止めません。うちのいちばん低い蕎麦は八割です。ここから下の目盛りが空いているのは、品揃えの都合ではありません。

Rice bowls & tempura

丼物

天丼千四百円
海老二本と、その日の野菜を三つ。甘汁で仕上げます。蕎麦と一緒に召し上がる方が多いので、半分の量のものも置いています。
親子丼千百円
つゆは甘汁です。鶏は腿だけを使います。
玉子丼九百円
鶏の入らない親子丼です。品書きでいちばん古いもので、初代の頃からあります。

丼物も天ぷらも、蕎麦と同じ厨房で作ります。揚げ場は打ち場の隣です。そば粉を避けてお作りすることはできません(六の節)。

The flour

粉 ── 同じ八割が二つある理由

一粒の蕎麦の実は、挽く順で別の粉になります。ここが、割合が品質の順位にならない理由です ── 更科と二八はどちらも八割で、色も香りも喉ごしも別のものです。分けているのは割合ではなく、一粒のどこから来た粉かのほうです。

  1. 一番粉いちばんこ

    First flour

    殻を取った実を挽いて、はじめに落ちてくる粉です。実の中心、いちばん内側のところ。

    白。ほとんど真っ白で、打つと透きとおった麺になります。白いのは中心の粉だからで、そば粉が少ないからではありません。更科は八割 ── 二八と同じ数字です。

    香りは薄く、そのかわり甘みがはっきりしています。喉ごしがいちばん軽い。蕎麦の香りを探しに来られた方には、物足りないと言われます。

  2. 二番粉にばんこ

    Second flour

    一番粉のあとに落ちてくる粉です。中心の外側と、甘皮のはじまりのあたり。

    うすい緑を帯びた灰色。挽きたてはもう少し緑が濃く、日が経つと灰に寄ります。

    香りと甘みが両方あります。うちの二八とかけは、この粉です。目立たない粉ですが、五代のあいだ品書きの真ん中にいるのはこれです。

  3. 挽きぐるみひきぐるみ

    Whole-grain flour

    殻だけを取った実を、分けずにまるごと挽いた粉です。

    灰黒。甘皮の欠片が黒い点になって麺に出ます ── これを星と呼びます。黒いのは外側まで挽いてあるからで、そば粉が多いからではありません。うちの更科も田舎も、そば粉の割合は八割と九割で、一割しか違いません。

    香りがいちばん強く、そのぶん粗い。細くは打てないので、田舎は太めに切ります。十割もこの粉です。

Broth and soba-yu

つゆとそば湯

蕎麦は色をほとんど持っていません。このページで唯一の色が返しの黒褐色なのは、意匠ではなくそういう事情です。せいろの辛汁と、かけの甘汁は別に引いています ── 同じつゆを薄めているのではありません。

返しかえし
濃口醤油と味醂と砂糖を合わせて、甕で二週間寝かせたものです。角が取れるまで置きます。継ぎ足しはしていません ── 五代目になってから、ひと甕ずつ引いて使い切る作りに変えました。
出汁だし
鰹の本枯節と宗田節を合わせて、朝に一度だけ引きます。昼で足りなくなった日は、夕方の分をもう一度引きます。二番出汁は取りません。
辛汁からじる
せいろ用の濃いほうです。「猪口に半分だけ浸けてください」とよく言われますが、あれは作法のお願いではありません ── 半分浸けてちょうどになる濃さに引いてあるからです。全部浸けると辛いのは、こちらの都合です。
甘汁あまじる
かけと丼物のつゆです。辛汁とは別に、薄く引きます。同じつゆを薄めているのではありません。

そば湯

茹で釜の湯を、湯桶でお出しします。猪口に残った辛汁を割って召し上がってください。うちがこれをお出しするのは、辛汁が残るからです。

体によいからではありません。そば湯が健康にどう働くかを、うちは確かめていませんし、書きません。蕎麦屋がこれを言うのは商売として下手ですが、確かめていないことを効能として刷るわけにはいきません。

そば湯は、そばを茹でた湯そのものです。そばアレルギーの方には、これがいちばん濃いものになります。

Your first bowl

一枚め

はじめての方に、うちがどうお答えしているかです。押してみてください ── どれを押しても、いちばん高いものは出てきません。

一枚めに、何を頼むか

What sort of day is it

今日はどちらでいらっしゃいますか

First time

二八せいろ80% / 二番粉千円

二八のせいろです。この店の芯で、いちばん多く打っている粉と割合です。ここを知っていただかないと、ほかの五本が何と比べて白いのか黒いのか分かりません。十割からお始めになると、二枚めがすべて物足りなく感じます。

What this never says

この装置は、どの事情を押しても十割を勧めません。品書きでいちばん高く、いちばん打つのが難しく、うちがいちばん誇りにしているものです。それでも一枚めには勧めません ── 十割は、二八を知っている方が、時間のある日に召し上がるものだからです。二枚めか、三枚めか、来年でも構いません。

これは好みの話なので、お客さまのほうが正しいことがあります。ご自分で決めておいでの方に、うちから言い直すことはありません。

If you are allergic

そばアレルギーの方へ

先に申し上げます。この店では、何も召し上がっていただけません。うどんも、丼物も、天ぷらもです。

What the law asks of us

法律は、うちに何も書かせていません

そばは、食品表示法が定める特定原材料八品目 ── えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生 ── の一つです。少しの量で重い症状が出ることがあるので、この八つだけは表示が義務づけられています。

ただし義務がかかるのは、容器包装された加工食品です。店で調理してその場でお出しするもの ── 外食は、対象外です。そば粉を主に使うこの店は、法律上は何も表示しなくてよいことになっています。

Why a label would not help

そして、書いても解決しません

  • 麺はすべて同じ釜、同じ湯で茹でます。うどんも同じ釜です。
  • 湯は日に何度か入れ替えますが、そば粉は溶けて湯に残ります。そば湯は、その湯です。
  • 打ち場は客席の裏にあって、朝から昼過ぎまで、そば粉の粉が舞っています。丼物も天ぷらも、その空気の中で作ります。
  • 同じ手が、同じ布巾が、同じ盆を持ちます。

だから「これなら大丈夫です」と言える一品が、うちにはありません。「アレルギー対応」と書いた品書きを作れば、それは嘘になります。作りません。

うちにできること

  • お連れの方だけがお入りになるのは、お断りしていません。ただ、店の中の空気そのものにそば粉があります。重い方は、扉の内側に入られないほうが安全です。
  • 出前も同じ厨房で作ります。同じです。
  • お電話でのお問い合わせには、正直にお答えします。「たぶん大丈夫」とは申し上げません。
  • 近所に、そば粉を一切扱わない食堂があります。お尋ねいただければ、うちが知っている範囲でお伝えします。

そば以外の七品目についても、同じ理由で「除いてお作りします」ができません。卵は玉子丼と親子丼に、小麦はつなぎと天ぷらの衣に使っています。乳と落花生はどこにも使っていませんが、共用の設備と器具で作っている以上、混入しないとは申し上げられません。

これは医学的な助言ではありません。どの程度の量で症状が出るかは人によって違い、うちには分かりません。ご判断は、かかりつけの先生とご本人のものです。

The nought on the rule is not a nought

100
91
90
80
0

それでも、そばアレルギーの方は召し上がれません。同じ釜、同じ湯で茹でるからです。割尺の零は、安全の零ではありません(六の節)。

What we cannot do

できないこと

方針ではなく、理由の一覧です。理由が先にあるので、例外が作れません。一つめは前の節の要約で、この店でいちばん重い断りです。

  • そばアレルギーの方に、「これなら大丈夫」という一品をお作りできません

    同じ釜、同じ湯、同じ空気だからです。表示を足しても厨房は変わりません。うちが差し上げられるのは代わりの一品ではなく、正直な断りだけです(六の節)。

  • 生そばのお持ち帰りと、お取り寄せをしていません

    打ってから茹でるまでの時間を、店が握れなくなるからです。せいろは打った日のうちに、注文が入ってから茹でます。袋に入れて渡した時点で容器包装された加工食品になり、原材料もアレルゲンも表示の義務がかかりますが、うちが断っている理由はそこではありません ── 手を離れた蕎麦の味に責任が持てないからです。

  • 十割を毎日は打ちません

    その日の粉と湿度で、繋がらない日があります。無理に繋げようとすれば、それは十割ではなくなります。打てない日は朝のうちに品書きから消して、入口に札を出します。「今日はありません」と申し上げるのが、いちばん多い断りです。

  • 「日本一」「最高」「本物の蕎麦」と書きません

    確かめられないからです。うちが比べたことのある蕎麦屋は、この町の数軒だけです。

  • 蕎麦の体によいところを書きません

    ルチンが、そば湯が、というのはこの商売でいちばん多い売り文句ですが、うちは確かめていません。確かめていないことを効能として刷ることはしません。そば湯をお出しするのは、猪口に辛汁が残るからです。

  • 産地を一つに書きません

    日によって二つ三つの畑の粉を合わせます。今日どこの粉かは、帳場の横の黒板に書いてあります。一年を通して同じ産地だけで打っているかのように刷るほうが、嘘に近い。

  • 大盛り無料も、食べ放題もしません

    その日に打てる量が決まっているからです。夕方に無くなれば、その日は終わりです。

  • 待ち時間を短く申しません

    注文をいただいてから釜に入れます。茹では四十秒から七十秒で、これは縮みません。混んでいる日は、そう申し上げます。

The shop

店のこと

明治三十四年から、湯島の同じ場所にあります。お客さんが店で言ったことを三つ載せました ── どれくらいおいしかったかは書きません。うちが確かめられないことなので。二つめは、何もお売りしなかった日の話です。

Why the shop is called a kneading bowl

木鉢(きばち)は、粉と水を合わせて捏ねる鉢のことです。この商売には「木鉢三年、延し三月、包丁三日」という言い方があって、いちばん長くかかるのが木鉢、いちばん短いのが包丁だとされています。初代が屋号を決めるとき、「うちは包丁の店ではない」と言って鉢のほうを取ったと聞いています。細く切るのは覚えれば誰でもできて、その日の粉に水を何合わせるかは、五代やってもまだ毎朝ちがいます。客席から見えない仕事の名前を看板にしたので、由来をお尋ねになる方が多い屋号です。

  • 十割をくださいと言ったら、今日は打っていませんと言われた。品書きから消してあった。翌週の土曜にまた来た。

    四十代・男性/二度目

  • 子どもがそばアレルギーで、家族では入れないと電話で分かった。扉の内側にも入らないほうがいいと言われた。がっかりしたが、はっきり言ってもらえたので、迷わずに済んだ。

    三十代・女性/お電話のみ

  • 更科と二八が同じ八割だと知らなかった。白いほうがそば粉が少ないのだと、ずっと思っていた。

    六十代・男性/常連

Getting here

行き方と時間

予約は承っていません。せいろは茹で上がりから三分がいちばんよいので、お待ちいただいてから釜に入れます。四名以上のお座敷だけは、お電話でご相談ください。

所在
東京都文京区湯島 3-31-7
行き方
東京メトロ千代田線 湯島駅 3番出口より徒歩4分/銀座線 上野広小路駅・大江戸線 上野御徒町駅より徒歩7分
電話
03-3832-0416
支払
現金・各種クレジットカード・QR決済
創業
明治三十四年(1901年)創業/五代目
許可
文京区保健所 飲食店営業許可(生活衛生課)

Hours

11:00 – 15:00十四時半を過ぎると、その日の蕎麦が残り少ないことがあります。
17:00 – 19:30蕎麦が無くなり次第、早く閉めます。夜は打ち足しません。
休み
日曜・第三月曜祝日は営業します。年末は三十一日まで、年始は五日から。
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